全力で走って来たのに、まだ笑う余裕がある。


息は切れているが、汗は出ていない。


心地よいと感じられるくらいの疲れが体をまとっていた。


自分のものとは思えないスピードでここまで走って来ることができた。


足は自然と前へ前へと進み、走るたびに気持ちは高ぶって行った。


できることならこのままどこまでも走り続けたい。


校門をくぐる直前にそう思ったほどだ。


この足は本物だ。


オリンピック選手の足を手に入れたんだ。


あたしは自分の足を撫でて、ニヤリと笑ったのだった。