「350万円。意外と安いですが、大丈夫ですか?」


モンピーが七島雪歩さんへ向けてそう聞く。


七島雪歩さんは小首を傾げて「仕方のない事です」と、返事をした。


心臓が張り裂けそうなくらいに緊張している。


まさか、本当に……。


「それではここで締め切らせていただきます!!」


モンピーのそんな声が聞こえてきて、あたしの視界はグラリと揺れた。


呼吸をすることさえ忘れて、放心状態でモニターを見つめる。


あたしが……落札した……。


その事実がまだ信じられなくて、モンピーがステージに上がるように言っても全く聞こえていなかった。


傍観者から、参加者へ。


そして購入者へ……。


あたしは無意識の内に立ち上がり、ステージへ向かって歩いていた。


まるで引き寄せられるように……。