店員さんの話を聞く限りじゃ、なにも危ない場所へ行くわけじゃなさそうだ。


会場の場所が普通とは違うだけで、どうってことないオークションだと思う。


知らない画家の絵が出てきて、なぁんだ、やっぱりいらないね。


そう言って笑って終わるだろう。


あたしはエレナの腕を掴んだ。


こういう、少し不気味で冒険心をくすぐるような場所は好きだった。


ドアの向こうの、見たことのない世界を覗いてみたい。


そんな気持ちがふつふつと成長していくのを感じる。


あたしはエレナの腕を掴んだまま、もう一方の手でドアノブに触れた。


ドアノブはひやりと冷たくて、回すと微かに音を立てた。


そして、あたしはそのドアを思いっきり開いたのだった。