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生徒たちでごった返している廊下を走りぬけ、一気に昇降口に向かう。


あたしと同じように急いでいる生徒を見ると、あの子もオークションに行こうとしているのではないかと感じて、あたしの足は更に速くなった。


休む暇もなく服屋さんに到着して息を弾ませる。


「あら、また来たの? 汗びっしょりじゃない」


店員さんが驚いた顔で出迎えてくれる。


「タオル持ってこようか?」


そう言ってお店の奥に引っ込みそうになる店員さんの手を掴んだ。


「ドアを開けてください」


どうにか呼吸を整えてそう言った。


「でも……」


「お願いします。今回の商品は手に入れたいんです」


そう言うと、店員さんは根負けしたように「わかった」と頷き、試着室を移動してくれた。


目の前に現れた扉にあたしの心は躍り始める。


銀色のドアノブに躊躇なく手を伸ばす。


その冷たい肌触りが今はとても心地よく感じられた。


「落札できるといいね」


店員さんのそんな声を背中に聞きながら、階段を下りて行ったのだった。