店員さんは店の奥に置かれている試着室を手前に引っ張り出した。


簡単に動かせるようにキャスターがついてるようだ。


そしてその奥から現れたのは……ドア、だった。


あたしとエレナは目を丸くしてそのドアを見つめる。


「ここから行けるよ」


店員さんにそう言われるが、あたしとエレナはドアの前で立ち尽くして動けない。


銀色のドアノブがギラリと輝き、何か不吉なものを連想させた。


ただの暇つぶしで行くような場所じゃないことは確実だと思った。


「どうしたの、行かないの?」


店員さんが不思議そうな顔をしてあたしとエレナを交互に見る。


「ど……どうしよう」


エレナは不安そうに眉を下げている。


だけど、このドアの向こうに何があるのか気になる。


「行くだけ、行ってみれば? 初めての人は大抵困惑するけど、何度かリピートしている人もいるよ」


店員さんの言葉にあたしは驚いた。


リピートすると言う事は、今までも何度かここでオークションが開かれていたと言う事だ。


「……行ってみようか」


あたしは呟くようにそう言った。


「本気?」


エレナは不安の色を濃くして聞いて来た。


「行くだけ。行って会場の様子を見て来るだけ」