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もう一度。


もう一度だけオークションに参加しよう。


授業を受けながらもあたしは先生の話なんてちっとも聞いていなかった。


オークションで自分に合った才能を見つけることができれば、こんなところで勉強なんてしなくてもいい。


石澤先輩のように学校へ来る暇もなく、才能を最大限に活用すれば生きていける。


次のオークションがいつ行われるかということがわからない事だけが、難点だった。


不意にメールが送られてくるため、会場に行けない場合もあるだろう。


オークションに参加しようと思えば、それだけで今の生活に支障が出る。


それを踏まえた上で行動しなければいけない。


不自然にならないよう、日々の生活を送りながら、いつでもオークションに行けるように……。


そう考えているといつの間にか授業は終わり、みんな帰る準備をし始めていた。


「藍那、帰ろう!」


さっきまで落ち込んでいたエレナが鞄を持って駆け寄ってきた。


「エレナ、大丈夫?」


「正直ショックだけど、人の事でいつまでも落ち込んでいられないでしょ」


エレナはそう言い、ほほ笑んだ。


少し寂しそうな顔をしているけれど、大丈夫そうだ。


「そっか。じゃぁ一緒に帰ろう」


「たこ焼き屋に寄って帰ろう!」


エレナはマイナスな気持ちを吹き飛ばすように、元気よくそう言ったのだった。