藤吉さんの言っていたことは本当だった。


その現実がエレナを無言にさせていた。


それとは正反対にあたしの心は躍っていた。


オークションは本物だ。


石澤先輩も藤吉さんも、世間に、世界に認められる才能を発揮している。


「信じられない」


1年生の教室に戻ってからエレナはそう呟き、ため息を吐き出した。


石澤先輩の事を本当に尊敬していたのだろう。


必死で努力をして夢を掴んだ石澤先輩。


それがオークションで買った才能だったと知り、裏切られた気分なのかもしれなかった。


「エレナ、大丈夫?」


「うん……ちょっと、ショックで……」


そう言い、うつむく。


あたしはエレナの背中をさすりながら考えた。


この学校内だけでもすでに2人、オークションの購入者がいる。


と言う事は、全国で言えば一体どれだけの人数になるだろうか?


テレビに映っているあの俳優も、あのモデルも。


すべての人間の才能が疑わしく感じられてくる。


でも、それだけの人数がオークションで成功しているということなのだ。


それなら、きっとあたしだって……。


そう思ったとき、午後の授業を知らせるチャイムが鳴り、あたしは自分の席に戻ったのだった。