オークション

☆☆☆

久しぶりに訪れたそのお店は相変わらず高価な洋服が並んでいて、貧乏人お断り! という雰囲気が漂っていた。


「なんか居心地悪いね」


エレナがそっと囁いてくる。


あたしは1つ頷いた。


勢いで店内へ入ってきてしまったものの、オークションを行ってる気配は全くない。


もしかして、場所はここじゃないのかもしれない。


狭い店内をあっという間に一周して出口へと戻ってきてしまった。


もう、このまま出てしまおうか。


オークションなんて暇つぶしで興味を持っただけだし、会場に付けなくても遊んで帰ればいいし。


そう思った時だった。


「もしかして、オークションに来たお客さん?」


今までカウンター内にいた若い女性店員さんがそう声をかけて来たのだ。


その言葉にあたしとエレナは立ち止まった。


20代前半で、口に大きなピアスを開けて個性的なファッションをしている店員さんが、ジロジロとあたしたちを見ている。


「そ……そうですけど……」


「こっち」


あたしが返事をすると同時に店員さんはそう言って歩き始めた。


あたしとエレナは慌ててその後ろを付いていった。