私を生かす声の主は、綺麗な顔立ちをした男性だった。

 ……いや、もしかしたら女性なのかもしれない。見分けも聞き分けもつかないほど、綺麗な人だった。

 どちらにせよ、今から死ぬ私には関係のないことなのだけれど。


「……どうして、死ぬの?」


 理由を尋ねられた。

 理由を尋ねるのは、最初の質問に対する答えが分かったからなのだろう。

 死ぬか、否の問いが見付かっていなければ、次の段階である“理由”には行き着かないから。

 私が死ぬと分かったから、理由を尋ねて来たのだ。物分かりがいいのは、私自身、わざわざ口にしなくて済むから助かる。


「待って、当てさせて」


 ……は?

 これは当たれば景品がもらえるような、クイズじゃないんだけれど。

 ……まあ、勝手にべらべらと話してくれるのは、私の喋る手間がかからなくて嬉しいけれど。


「その目は、生きることに絶望した目だね。さしずめ、家族との仲がよろしくない、クラスメートにイジメられてつらくなった、信じていた恋人に裏切られた──要は、人間関係に嫌気がさしたんだね」


 ……悔しいけれど、ぜんぶ当たっている。