作者のあとがきを一字一句、逃すのを恐れるかのように丁寧に目でなぞった私は、本をゆっくりと閉じた。 読み終えた。 窓の外はすっかり薄暗くなっている。 触れれば肌にまとわり付きそうな、そんな薄暗さ。 風景の中の“時間”はまだ動きそうもない。 その空気はきっと、痛いほどに冷たいのだろう。 図書室の、ぼんやりとした暖かな空気とは真逆。 「先輩。読み終わったんですか?」 「うん。」