そうそう。

牧村商事の社長には、もれなく牧村総合病院の理事長の座も付いてくる……ってのも言わなきゃな。

陽菜を溺愛する叶太くんのことだ。

医療従事者ではない彼には、その地位は魅力的かも知れない。



牧村総合病院に潤沢な資金を回すためには、牧村商事の業績も上げなくてはいけない。

きっと彼は、頑張ってくれるだろう。



「楽しそうね、幹人。何か嬉しいことでもあった?」



妻の響子さんが不思議そうに聞いてきた。



「いや、もうすぐ陽菜が戻って来るなと思ってね」

「ああ。本当ね。今回も何度もヒヤヒヤしたわ……。無事、元気になってくれて、本当に良かった」

「ああ」

「叶太くんのおかげかしらね」

「そうだな」

「あら。否定しないのね」



意外そうに、響子さんが目を丸くした。



「いや、良い婿をもらったと思うよ……本当に」



顎に手を当て、思わずにやりと笑うと、響子さんは、どこまで分かっているのか、面白そうにクスッと笑った。


(完)