……が、しかし、だ。



まさか、心臓は調子の悪いまま、

同い年の男が、

まだ高校生の娘を奪って行くとは思いもしなかった!



しかも、陽菜を想う気持ちは、私が妻を思う気持ちより、もしかしたら遥かに深いのではないかと思わされるくらいで……。

陽菜のために高校生ながら収入を確保した上で、結婚も筋を通して、私に事前に許可をもらいに来たくらい、そいつは陽菜を本気で愛している。



確かに、陽菜のためには、そいつとの結婚が良いのだろうと思ってしまった自分に、心底驚いた。



だが、許せるはずがないだろう。

そして、怒りに任せて、嫁にはやらんと言うと、そいつは怯むどころか、即座に言い間違えたから、やり直しても良いかと言いやがった。



自分を陽菜の婿にしてくれ……と。

自分が姓を変え、牧村になるから、私の息子にしてくれと……。

しかも、新居に出て行くのではなく、この家に住ませてくれという。



気がつくと、形がどうあれ陽菜を奪われるには違いないのに、私は思わず頷いていた。



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