娘の陽菜(はるな)は生まれつき心臓にひどい奇形があり、生後一週間目を皮切りに、過去何度も開胸手術を受け、過去何度も生死の境を彷徨った。

普通に歩いたり階段を上ったりするのすら、陽菜には大仕事。
しょっちゅう体調を崩して寝込むし、入院加療が必要となる。

生まれてすぐが最初の余命告知。
早急に手術をしなければ命はないと言われた。手術の成功率も決して高くなく、一ヶ月も早く生まれた小さな小さな娘を見て、一人家で涙した。

その後も、何度も大きな手術をした。

それでも、娘の心臓が治ることはない。

根治する目処も立たないまま、少しずつ心臓の状態も悪くなり、長年の投薬の副作用もあり、心臓以外の臓器の状態も悪くなっていた。

心臓移植が必要なら、海外でもどこでも連れて行こうと思っていたのに、神の手と呼ばれるような世界的な権威による手術の効果もあってか、長く薬でのコントロールができていた。
他に治療法がある今の状態では、移植は適応外だ。

そして、心臓の状態が少しずつ悪化していくとともに、他臓器の状態も歩調を合わせるかのように悪くなって来ている。
心臓の状態が移植適用になる前に、他臓器がこれ以上、悪くなったら、もう移植はできない。

今はとにかく、心臓も他の臓器もできる限り大切に使っていくしかない。