桐崎くんの姿を見つけると、あゆちゃんは私の背中を押した。


だけど、私はいつもみたいに笑顔で"うん"とは言えない。

いつもみたいに、桐崎くんに話しかけられない。冗談言われて、笑いかけてもらえない。


足を動かさない私を不審に思ったのか、あゆちゃんは首をかしげてる。


ギュッと拳を握る手が強まるのが自分でもわかる。




ねぇ、桐崎くん。
今、話しかければ昨日のことは嘘のように普通にしてくれる?



ジッと桐崎くんを見つめてると桐崎くんが振り向いて、目が合う。

ドキンっと胸が鳴るのがわかった。
けど、すぐに逸らされた。



私は、鞄をギュッと握りしめて無理に笑顔を作り、あゆちゃんの方を見た。