俺ははっきり言って小4の頃のような奈緒の姿をもう2度と見たくなかった。
滅多に泣かない奈緒が泣いていて、
そんな奈緒をあの時強く強く守りたいと思った。
なのに、今日の沢村のミスのせいで涙をこらえる奈緒を見て思い出した。
幼い頃、
奈緒の3歳の誕生日に、生まれた時からずっと一緒だったゴールデンレトリバーのナナが死んだ時に
泣き喚いていた奈緒を抱きしめて、
「泣かないで、将来一緒にいてくれたらナナと同じわんちゃんをぼくがかってあるから。」
そう言ったら泣くのをやめた奈緒。
代わりに花のような笑顔が咲いて、
約束ね!って言ったんだ。
奈緒は覚えてないだろうけどな…。
それと同じようにみんなの一言一言に笑顔を浮かべた奈緒。
俺の腕で眠る奈緒は、
もう1人じゃない。
俺以外の誰かがいるからもう大丈夫。
けどこれだけは届いて欲しい。
「約束守れなくてごめんな…
だけど俺はずっと奈緒が大好きだから。」
そう言っていつの間にか俺は眠りについていた。
部屋の前で一馬くんが聞いていることにも気づかずに…。


