「郁人!郁人!しっかりして!郁人!」
必死に問う。
どうやら、正面衝突をしたらしい。
郁人の向かい側には、ニヤニヤと上半身を起こした状態の先輩。
郁人は辛そうに顔を歪める。
そんな郁人の頭を抱きしめて必死に呼吸を確認する。
「郁人、郁人、しっかり
私の声が聞こえてたら手を握って、」
郁人の耳元で焦る気持ちを抑えながら囁く。
郁人の手を握った私の手を
握り返して、お願い。
その願いが通じたのか、
ゆっくりと、だけど確かに私の手を握り返した郁人は、
ゆっくりと目を開けると、
「な、お。」
嬉しそうに涙を流して私を抱きしめた。
わけがわからない。
だけど、
郁人に抱きしめられたのが嬉しくて私は泣きながら抱きしめ返した。
ごめんなさい神様。
今だけはお願いします、


