「私の方を見て。」
「嫌です。」
「なんで。」
「なんで振り向かなきゃだめなんですか?」
「なんで振り向かないの?」
強い先輩の声にだんだんとイライラしてくる。
「なんで振り向かないといけないんですか?」
「奈緒はちゃんと人の目を見て話す子でしょ
ちゃんと私の目を見て。」
「…いやです。」
小さい声でポツリと呟く。
「え?」
「いやです!なんで振り向かなきゃいけないんですか?!」
震える声で体育館に響く声で叫んでいた。
ハッとして辺りを見回すと心配そうに私達を見つめる皆。
郁人と目が合ってしまい私は思わず目を思いっきり逸らしてしまった。
「奈緒。」
沙織先輩は私の腕を引いてマネージャーの更衣室へと連れて行く。
沙織先輩の背中が涙で滲む。
優しい沙織先輩の腕。
マネージャー室に着くと同時に私は
怖い顔をした沙織先輩に見据えられた。
そして、腕を振り上げた先輩に思わず目を瞑ると、
ギュッと優しく抱きしめられた。
え?
なんで?


