学校から家まで徒歩40分。
地味に遠いけど、
郁人とはそんな道が近く感じるんだ。
朝練を遅刻しそうになって走った時だって
郁人は私のカバンを持ってくれて、
私の腕を引いて走ってくれて、
だから、全然疲れなくて…
私がテスト悪くて落ち込んでいる時だって
この道で励ましてくれた。
私が転んだ時は、
しょうがないなと笑って私をおぶって学校まで行ってくれて、
どんな時だって、郁人は私の隣にいてくれた。
でも、これからは郁人は私の隣じゃなくて、
美咲ちゃんの隣にいることになるんだ。
ポロリ、
走っていた足がいつの間にか止まっていて、
余計なことを考えたせいで止まった足。
なんでだろう。
だけど、突然甲高い女の人の笑い声が聞こえて、
目の前を高校生くらいの男女の二人乗りが通った。
頭が真っ白になるとはこの事なんじゃないかな。
私が大好きな道端に咲いている野コスモスが自転車の風で揺れる。
やっぱり、
おめでとうも頑張れも言えないや。
郁人とは断定できないけど、
きっとそう。
だって、
ワイシャツの袖をまくった腕から見えた
青いリストバンド。


