だけど、大丈夫。

「…大丈夫だよ。
ちゃんと郁人のこと信じるから」

そう笑って言うと、
郁人は私を強く優しく引き寄せて

抱きしめてきた。

私の耳元で、

「奈緒、まだ言いたいことあるだろ?」

郁人の声に涙が出そうになった。

なんで、わかるの?

最近泣きすぎてる。

そんなのわかってるけど、

それくらい色々あったから…。

なんで、
郁人はわかっちゃうの?

私は、郁人を抱きしめ返した。

佐野君がお昼休みに言った

《沢村さんと付き合ってただろ!》

が、胸から突き刺さって抜けない。

その瞬間、

郁人と美咲ちゃんがキスをしてるのを思い出して、
二人乗りしてるのも思い出した。

それがモヤモヤして、確かめたくて、

ほんの少しのあれは郁人じゃないという期待が私の中を駆け巡った。


震える声で、

「郁人、怒らない?」

そう聞くと、

「…話によってだな。」

といってきた。

だけど、声が穏やかだから、
大丈夫。

そう信じた私はゆっくりと口を開いた。