玄関を出ると、目に入ったお兄ちゃんが前使ってた自転車。

「郁人!自転車なら余裕で着くよ!」

と、自転車を指差しながら言うと、

怖い顔をした郁人は

「ダメに決まってんだろ?!」

怒ってきた。

なんで?!

「なんでダメなの?!」

「…」

私も負けじと言い返すと、

無言で私を睨みつける郁人。

こんな、郁人初めてだ。

思わず怯みそうになった時、

「…兄貴みたいになったらどうすんだ?

兄貴みたいに奇跡なんて起こらないかもしれねぇ。

それに、奈緒は俺にとって命より大事なもんだ。
そんな大切なやつ乗せられるはずねぇだろ?

少しはわかれよ。」

そう、悲しそうに笑った郁人。

そうだ、

自転車のせいで、周兄はバスケができなくなったんだ。

私は、無言で頷くと、

郁人は私の腕を引いて走り出した。