「きっと、記憶が戻ったのも

奈緒ちゃんのおかげね。

奈緒ちゃん、本当にありがとうね。」

そう言って、ボロボロ泣くわたしを抱きしめてくれた佐和子さんは、

郁人に聞こえないように
耳元で、

「バカ息子をよろしくね。」

震える声で、

泣きながら私にそう言ってくれた。

私も郁人には聞こえないように、

「はいっ。

何があっても守ります。」

そう言って、佐和子さんと笑い合った。

強く強く抱きしめあった私と佐和子さん。

私の周りにはいい人がたくさんいて、

世界でいちばんの幸せ者だと思う。

泣きながら抱き合う私と佐和子さんを見て、

郁人は優しく見守ってくれていた。