「は?奈緒?」

心配そうな郁人の声にハッとして急いで顔を上げると

「えー、あー、なんでもないよ!
いや、本当に助かっちゃったよ!

郁人ありがとうね!いつも本当にありがと!

じゃあ、私洗濯物干しに行ってくるから
郁人は練習頑張って!」

と笑うと呆然とする郁人から、

カゴを奪い取って最後の段差をなんとか降りてから

干し竿まで重いカゴを持ちながら走った。


だけど、

ぐいっ。

腕を引かれて後ろを振り向かされる。

お願い、今だけはやめて。

顔を下に俯かせながら

目をつぶって郁人と逆の方を見ていると、


「こっち向いて、奈緒。」

優しい郁人の声に心が、震えた。

本気で心配している証拠。

唇を噛み締めながらゆっくりと郁人の方を振り返ると、

心配そうに揺れる郁人の瞳が私を捉える。

「どうしたんだよ。」

郁人の心配そうな声に

私は笑って

「もう〜!どうしたの?本当?!

郁人おかしいよ?!
私は大丈夫だよ!」

と柄にもなくヘラヘラしてみる。

そんな私に少し怒った顔の郁人。

やめて、怒らないで。

お願い、





その時、









「瀬山先輩!奈緒先輩!」



沈黙が流れる私たちの間に、


美咲ちゃんの声が鳴り響いた。