そして、

今日。

郁人が退院する日。

そして、

お母さんとお父さんがアメリカへ旅立つちょうど1ヶ月前。

郁人は未だに記憶は戻っていないけど、

少しずつ皆と仲良くなっていって、

私には完全に心を開いてくれている。

記憶をなくす前の郁人と変わったことは…


あの笑顔を私以外にも向けることになったこと…

郁人の性格が真反対になってしまった。

記憶がある郁人はちょっと俺様も入っていてクールで無口の方だったのに、

今では、爽やかで話も普通にしていて、

強引なことを一切しない郁人になっていた…

優しいところは変わらないけど何故だか悲しくなってしまった…



郁人にはあの事故のことを軽く話した…

『私をかばって階段から落ちた郁人は、
重傷を負って、記憶がなくなっちゃったの。』

そう告げた私に、

郁人は怒るどころか、

『そっか、俺本当に奈緒のこと好きだったんだな。

でも、よかった。
奈緒が無事で、

奈緒を守れてよかった。

きっと、記憶のある俺でもそう言ってたよ。』

と、無意識に流れる涙を優しく拭ってくた郁人。

前の郁人なら涙を流す私を力強く抱きしめて大丈夫。

そう言ってくれたと思う。

けど、

私の頬に触れる郁人の体温も、

爽やかな郁人も
悪くないな、

って思って見たり…