「奈緒、わかる?!」

お母さんの声に私は頷いた。

それより、郁人は?

バダバタバタと聞こえてくる足音に、

郁人?と期待を込めてドアを見つめると、

ドアから入ってきたのは

私が昔お世話になった

小泉先生と、看護師さん達だった。

郁人は?

嫌な予感が脳裏をよぎる。

「…いく…と…は?」

掠れた声を必死に出すけど、

看護師さん達のバタバタと走る足音に掻き消されてしまう。

「…いく…と…は?」

何度も何度も言葉を投げても、

私の小さな声じゃ誰も聞き取れない。

だって、

いつもなら、


郁人だけがどんな声でも、受け取ってくれるから…。