嬉しいけど、

美咲ちゃんの気持ちを考えると、

酷く胸が痛んだ。

けど、

次の言葉で、嬉しい気持ちもなくなった。

「けど、美咲。

あんた、奈緒先輩を階段から突き飛ばそうとしたよね?

あんたにも同じ思いさせてあげる。

でも、お生憎様だね、

あんたを助ける人は誰もいないよ。」

そう妖しく笑った紀子ちゃんに

美咲ちゃんは、

涙を流して、

小さくごめんね…

と呟いてから、

紀子ちゃんに突き飛ばされたのを受け身も取らずに真っ逆さまに落ちていこうとしたのを、

気づけば私は腕を掴んで

美咲ちゃんの体を踊り場へと引っ張り上げていた。

けど、

反対にぐらりと傾いた私は、


そのまま、真っ逆さまに落ちていった。


「奈緒っ!」

郁人の叫び声が辺りに響いて…

冷たい床に頭を庇うように落ちた私は

何かに守られるように包まれていた。



霞む意識の中最後に見えたのは血だらけの郁人の姿だった。