泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~



久しぶりの本当の笑顔を浮かべられた気がした。

無意識に笑えている私。

郁人はそんな私の腕をぎゅっと引き寄せると

思いっきり抱きしめてきた。

状況がわからず思わず真っ赤になる顔を、

隠すように私は大きな郁人の胸に顔を埋めた。

ぎゅーーーっと抱き締められている体。

心臓がばくばくしていて

触れられている背中と、顔に熱が集まっているようで、

恥ずかしくて、けど嬉しくて

幸せで、

だけど不意に、

「…充電完了」

ぽそりと呟かれた声と同時に立ち上がった郁人は私を同時に立たせて、

私を守るように立ちはだかると、

「沢村。
もう約束は無効だ。

俺は誰にも口外しをしていない。

なのに、お前は奈緒を階段から突き飛ばそうとした。

この事がどういう事かわかるか?

ルール違反だよ。

もうこの時点でお前に反論もできないだろ?



俺は奈緒を陰で守るんじゃなくて、
堂々と守ってみせる。

世界で一番大切な奈緒を
堂々と守るって

奈緒が望まないのはわかってるけど、

この命を懸けても奈緒を絶対に守ってみせるから

奈緒に指一本触らせねぇから。

あと、俺がお前に脅されてるって噂の発生源はお前のすぐ横にいるやつだったりするかもな」


と、ギロリと郁人が睨みつけたのは、

「…え、き…こ?」


バスケ部で美咲ちゃんと一緒に強制退部させられた

紀子ちゃんだった。