郁人の大きな背中に腕を回して
郁人の胸に顔を埋めた。
ぎゅっと郁人のワイシャツを握りながら
もう離れたくない。
その意味を込めて、強く強く抱きしめていたけど、
やっぱり伝えたい事はあるから、
私は顔を上げて赤いリストバンドが付いている右腕を郁人の左頬へと伸ばした。
悲しそうに顔を歪める郁人。
「郁人、私を守るために私から離れたんだよね…」
私の憶測だけど、
あの手紙の内容やみんなの話の内容から多分これしか考えられない。
郁人は驚いた表情をすると、
「なんでっ、」
言葉に詰まっていた。
私はそっと握り締めていたルーズリーフを郁人に見せると
深くため息をついて私を離して座り込んでしまった。
頭を抱えるようにしてしゃがみこむ郁人に
私もしゃがみこんで郁人の頭をよしよしと気づけば撫でていた。
「ありがとね、郁人。
だけどもういいよ。
いじめくらいで私は傷つかないよ。
一番、傷つく事は郁人が私のそばにいてくれない事なんだよ。
あと、麻友に裏切られたり?玲奈に裏切られたり?春樹くんと理玖くんが郁人を裏切らない限り
私は傷つかないよ、
郁人がそばにいてくれるだけで私は幸せだから。」


