「奈緒に何ができるんだよ。
俺がいないと料理しかろくにできない奈緒に何ができる。
兄貴の事だけじゃない
俺だって色々とあるんだよ。
言っただろ?
俺たちはもう他人なんだよ。
俺はたまたま通りすがった道で奈緒が倒れていたから助けたんだ。
勘違いするな。
それに、立花から何聞いたかしらねぇけど
教科書だって俺が用意したんじゃねぇし、ジャージだって俺じゃない。
机の落書きを消したのも俺じゃねぇよ。
もちろん、上靴も俺じゃない。
だから、これ以上俺に関わるな。
奈緒は奈緒の道を進んでいけばいいんだよ。
俺の事なんて忘れて前に進め。
奈緒の俺を思う気持ちは
恋じゃなくて、
元、幼馴染の情なんだよ。」
郁人の冷めた突き放す声に
涙さえ止まった私。
けど、最後の一言に私は
気づけば郁人をビンタしていた。
最後の一言を聞いて涙が止まらない。
なんで?
なんで何もかも否定するの?
なんで、私の全てを否定するの?


