すると、すぐに空いた立て付けの悪いドアの音と
ベッド脇のカーテンが開く音。
顔を上げると辛そうに顔を歪める郁人が
「なんで、泣いてるんだよ。
奈緒。」
切なそうに優しく私の頬に触れた郁人の手の上に私も自分の手を重ねて、
「郁人が…隣にいてくれないから…だよ。」
震える声で郁人の目を見つめて素直に伝えた私の気持ち。
本当に伝えたいのは
こんな遠回りの言葉じゃなくて
《側にいて。》
素直にそう言いたいけど、
拒絶されるのが怖いんだ。
1分でも1秒でも長く
郁人に触れていてほしくて、
私は本当の本音を隠し続けるんだ。


