郁人は私を抱き上げるとすぐに近くの階段を駆け下りて、
私は涙を流しながら郁人にしがみ付いていた。
保健室に着くと先生もだれもいなかった。
ベッドに優しく下された私に
郁人はブレザーの胸ポケットから透明のプラスチックのケースを取り出すと私に差し出した。
痛み止めの薬だ。
持ち歩いていてくれたんだ。
郁人の左腕には青いリストバンド。
まだ、期待してもいいの…?
胸がぎゅっと苦しくなる、
けど不意に
「ちょっと待ってろ。」
そう言って保健室を出て行ってしまった郁人にさっきとは違う胸の痛みが襲ってきた。
行ってほしくなかった。
そばにいて欲しかった。
でも、脳裏を掠めた美咲ちゃんの存在。
胸と同時に膝の痛みも増して行って、
私はベッドの上で蹲った。


