教室の前で、
今日こそ郁人がきていますようにと祈ってから深呼吸をして、ガラリとドアを開けると、
胸が疼いたのがわかった。
私の机の隣には机に伏せている久しぶりの郁人の姿。
私はまっすぐに郁人の方へ向かうと、
「郁人。」
震える声にならないように慎重に声をかけた。
その声にぴくりと反応した郁人はゆっくりと顔を上げた。
前みたいに顔を上げてくれたんだ…
前みたいに郁人は私の声に顔を上げてくれたのに…
顔を上げた郁人の表情は郁人じゃなくて、
別人のように冷めた表情
何もかも諦めたような冷めた瞳。
周りの空気だって、いつもの郁人じゃなかった。
思わず、郁人の頬に手を伸ばそうとして、
後少しで触れるというところで、
パシッ。
私の手は宙を切った。
行き場の無くなった私の手。
シーンと静まり返る教室。
「…いく、と?」
震える私の声。


