コンコン。
「奈緒?」
気を使うような恐る恐る私に声をかけてくるお母さんの声に、
私は、
「今は、1人にしてっ。」
初めて人を怒鳴った瞬間だった。
感情が昂って自分でもどうにもならない
止められない。
大切な人を傷つけたくないのに止められない。
そのことに余計涙が溢れて、
「お願いだから出て行ってよっ!」
さっきよりも強く叫んでいた。
そして、
「ごめんね。」
弱々しいお母さんの声とともに閉まるドアの音。
それを聞いて、私は孤独になった気がした。
言っていることと感じていることが違いすぎていやになってくる。
「うっ、うっ。ごめんなさい。
お母さん、お父さんお兄ちゃん、佐和子さん、郁人ごめんなさい。」
「…なにが?」
ビクッ。
え?
郁人の声が聞こえた気がして恐る恐る目から腕を離すと、
ぶっきらぼうに立っている郁人の姿。
「な、んで。」
思わず目を見開いた私。
だけど、涙は止まらなくて、
頬を滑り落ちていく。
そんな私を、
けがを庇うように、優しく抱きしめてくれた郁人は、


