最寄り駅に着くと、
郁人の姿はなくて
それにもっと視界が歪んで、
改札から抜けた時に、
「奈緒!」
聞き慣れた声。
顔をゆっくりと上げると
そこにはやっぱり一兄が立っていた。
駆け寄ると、わたしはぎゅーっと一兄に抱きついて泣き喚いた。
優しく抱きしめ返してくれて一兄に余計涙は止まらなくて、
改めて家族の大切さを痛感した。
しばらくして落ち着くと、駅のロータリーに止められた一兄の黒の軽に乗り込むと
お兄ちゃんは運転をしながらゆっくりと口を開いた。
それは、突然で
頭が真っ白になるのは十分すぎる言葉。
「俺、来年の初めから彼女と美結と同棲する事になった。
お袋と親父は親父がアメリカに転勤になったらしい。
お袋も付いて行くって。
奈緒は、どうする?
美結は、奈緒なら大歓迎だって、
俺も心配だし…
奈緒はどうしたい?」


