「奈緒?」
戸惑った表情の郁人。
それもそのはずだ。
だって、この辺はお世辞にも都会なんて言えなくて、
電車だって、一時間にきて2本。
こなくて一本。
それに今日は土曜日だ。
だから皆この電車に乗ろうとする。
なら、あと一時間くらい待てる。
そう思ったのは、
建前で、
「もうちょっとだけ、郁人といたいよ。」
私の弱々しい声が、本音が
静かな駅のホームに私と郁人だけの空間でやけに響いた気がした。
郁人は俯く私の頭を優しく撫でると、
駅のホームの青いベンチに腰掛けた。
「奈緒、おいで。」
私は郁人の言葉に従って隣に座ると流れるのは沈黙。
無人駅にはベンチとホームと、チケット販売機と改札と自販機が2、3台だけ、
暇つぶしをするのもなくて、
どちらかといえばお互いあまり話す方ではない私たちは穏やかな時間が流れていた。
見上げれば綺麗な星空。


