帰り際のこの時間が一番嫌い。
だけど、
今日のこの帰り際が一番嫌いだ。
だって、
さっきから郁人の悲しそうな顔。
寂しそうな顔が私の心に擦り傷をつけていく。
1つ1つの言葉がどんどん重くなっていつしか、
深い傷になってしまいそう。
握り合ってる手も、
私と郁人の身長差も
私を優しく見下ろす郁人の表情も
なにもかも、
私を傷つけるんだ。
駅に着くと二人で静かに乗り込んだ。
帰宅ラッシュの時間なのか、
部活帰りの中学生、高校生
仕事帰りの疲れきったサラリーマンやOL
遊びから帰ってくる男子高生や女子高生が
溢れかえっていた。
郁人はその電車を見て顔を歪めると足を進めようとするのを
私は立ち止まって郁人の腕を引いた。
予想外だったのか
簡単によろめいた郁人は驚いた顔で私を振り返ると、
同時に電車のドアは閉まり、
そのまま、
プルルルルルルと発車音をならして、走り去って行った。


