郁人が美咲ちゃんを好きという事実が
私も知らないたくさんの私が出てくる。
初めての嫉妬
初めての後悔
初めての辛さ
そして、
初めての郁人が私の横から去っていくことの恐怖。
きょう、ふ。
そうだ、
私怖いんだ。
郁人が私の横から去っていくことがすごく怖いんだ。
その時、ぐいっと後ろにひっぱられた腕。
私の体は簡単に持ち上げられ、そのまま
ぎゅっと強く優しく抱きしめられた。
なにが起こったのか
分からない私は涙がいつの間にか止まっていて
そして、
耳元で
「ばかっ、離れんなよ。
探したぞ、奈緒。」
震える優しい声が私の鼓膜を揺らした。
「いくと。」
私は涙を堪えて郁人の背中に腕を回し郁人の胸板に顔を埋めた。
ぎゅーっと抱きついている私を抱きしめ返してくれた郁人はその体勢のまま
私の頭上で
「俺の大事なやつ泣かせたのはどいつだ?」
今までに聞いた時のないくらいの低い声を出した。
ビクッと反射的になる体。
そんな私に
「大丈夫だから。」
そう言って、私を抱きしめてる腕の片方で優しく私の頭を撫でてさっきより強く抱きしめてくれた。


