落ち着いた私は郁人と無言でお墓への道のりを歩く。
「奈緒。」
「…ん?」
「…俺は奈緒が…
奈緒が大切だから、
この気持ちはずっと変わらない。
ずっと、大切な幼馴染だから。」
幼馴染という言葉にひどく胸が痛む。
そう、私と郁人は幼馴染。
幼馴染以上でも以下でもない。
強調された言葉
幼馴染。
きっとこの関係が壊れることはないんだろうけど、
この関係から進むこともない。
「そうだね、
私も郁人の事大切だよ。
私もずっと変わらないよ。」
ちがう、本当は違う。
《嫌だよ、私は郁人が大好きだよ。
幼馴染としてじゃなくて異性として好きなんだよ。
お願いだから幼馴染以上になりたいよ。》
そう言いたかった。
だけど何故か私は言えなかった。
見上げた先の郁人の表情が
儚くて、悲しそうで
今にも消えてしまいそうだったから…。


