泣き虫とヒーロー ~約束の四つ葉のクローバー~



ドキドキする胸を押さえて、

気づけば駅に着いていた。

郁人、来てるかな。

キョロキョロするとすぐに見つかる長身の郁人。

駅の噴水の前に

白のセーターでデニムの黒ズボン。

胸元には長めの皮紐のネックレスに、

翼が付いていて、

すごくかっこいい。

ショルダーバッグを背負ってスマホをいじっている郁人に、

女の子3人組が近づく。

そして、ベタベタ郁人に触り始めた。

私は思わずムッとして、ずんずんそこに近づいてわざと郁人の腕に自分の腕を絡めて、

「お待たせ。」

と笑うと、

「待ってねぇよ。」

と笑って私の頭を撫でてくれた。


「え?あの、彼女さん、ですか?」

と言う、目の前のふわふわ系美人に、

私が返事に戸惑っていると、

「はい。見て分かりませんか?」

郁人の無機質な声。

私以外の女子には氷の如く冷たい郁人は今も健在だった…。

そんな郁人が、

美咲ちゃんを好きになった。


それは、いいことだと思う。

だけど、

私にとっては

"悪いこと,,

なんだよね。

と、少し落ちていると、

「奈緒?」

郁人の心配そうな声に慌てて顔を上げると、

顔も同じように心配そうで、

「どうした?」

郁人の声に、私は笑って

「なんでもないよ。

早く行こー!」

と郁人の腕を掴んだまま歩き出す。

いつの間にかナンパ3人組は消えていて、

けどそれが気にならないくらい私は、

どう例えたらいいかわからない不安に襲われていた。


そして、私と郁人の最後のデートが始まったんだ。