そのイレギュラーとやらは、彼女がわざわざ俺に許可を取ってきた合コンで起こった。
好みでもなんでもない男に言い寄られてキスされたらしい。


佑梨が好きな男がどんな奴なのかそんなに興味はないけど、世の中には色んな男がいて、出会い方も様々だ。
そしてアプローチの方法もそれぞれみんな違う。
きっと彼女にキスしたっていう男は、信頼関係を築くよりも先に手が出るタイプだったんだろう。


普段落ち着いている彼女からは想像も出来ないほど、佑梨はそのキスが衝撃的だったらしい。
ハンカチで口を拭うって相当だな、と。


考え事の多い彼女は、ちょっと気を抜くとボーッとしていることがある。
そこにつけこまれたんだ。






必死な様子の彼女に呼び出され、事情を聞いたときは単純に「バカだな」と思ったけど。


ゴシゴシと口を拭って、その合コン男とのキスを無かったことにしようとしている彼女の姿を見て感じた。


薄々感じていたけど、この人の心はだいぶ純なんだな、と。
キスごときでここまで悲しんで、そして自分を責めている。


自分に似ていると思っていた彼女の、俺との違いを発見したのだ。
次に見つける恋を大切にしようとしているということを。


俺なんて誰でもいいから適当に相手を見つけて、沙織に胸を張って恋人の存在を伝えられればいいと思っていたけど。
彼女はそうじゃない。


それに気づいたら、突然ひとつの考えが頭を過った。


俺とキスをしたら、彼女はどうなるのだろうと。