恋する想いを文字にのせて…

もしかしたら気まずいと思ってるのは私だけで、小野寺さんの方はつまらない…と考えてるのかもしれない。

この間とは違う雰囲気の私を、敏感に察知してるようだったから。




「……来未さんの手紙……」


発せられた声にギクリとして振り向いた。

つり革を握っている人は、こっちを見下ろして微笑んだ。


「この間の手紙、本当に面白かったよ。あの高校生の話、俺も読んでみたいと思った。今日先生に会ったら、原作を見せて貰えないか聞いてみようと思ってる。先生の家には蔵があって、そこに今まで描いた作品が全て収納されてる…と言ってたから」


「蔵⁉︎ あの土蔵みたいな…?」


漫画の中に描かれていた白壁と黒屋根の建物が思い浮かんだ。

私の想像を理解したらしく、小野寺さんは笑いながら「違う、違う」と手を振った。


「家の中にある納戸が蔵なんだ。一定の温度に保つよう空調設置が整えられてて。だから、その部屋のどこかに来未さんが最高傑作だと言った作品も蔵われてる筈だよ、きっと」


「でも…見せて下さいますか?私とは初対面なのに」


会ったこともない人を想像するのですら難しい状況なのに、津軽芽衣子本人が見せてくれるだろうか。

小野寺さんは単純に「きっと大丈夫」と太鼓判を押したけれど、不安を抱えながら電車に揺られた。



1時間後、言われるがままに電車を降りた。

駅舎の外へ出ると、(空気の匂いが違う…)と感じた。