『丁度その時、夕日が射し始めるの。

眩しい光に包まれた2人は、距離を置いたままその夕日を眺め始める。

夕日はどんどん沈んでいって、同時に2人の距離は縮まりだすんです。

それが一枚のページに、上から下へ連続したコマで流されていてーーー

最後は2人の肘がぴったり寄り添うところまでくるの。

肘がぶつかった2人は次のページで微笑み合い、嬉しそうに手を繋いで歩き出す。

次のデートはどこへ行こうかと相談するシーンで、物語はエンドを迎えるんです。』



少し行間を空けているのは、彼女自身が落ち着こうと思ったのではないか…と考えた。

踊っていた文字は、最初の頃のような丁寧さを取り戻していた。



『私はこの話が大好きで、中でも2人が近づくシーンは一番のお気に入りでした。

あのページには心があったかくなると言うか、しみじみと胸に迫る良さがあって……。

2人がハッピーエンドで良かったなぁ…と、子供心ながらに安堵した思い出があります。


この話のことをいつか先生に伺ってみたいな…と考えたことがありました。

男の子のモデルはいるんですか?と、聞いてみたいものがあるんです。


実際、あんなシャイな子がラブレターなんて渡せる筈がないと思うんだけど、それも今ならあり得るのかな…と思います。

あの子が自分を変えたい…と、真剣に願った上で行動してるんだとしたら、臆病でシャイな自分でもできる方法として、想いを文字にのせてみたのかもしれない…って。