『私が覚えているその話は、高校生の男女が主人公でした。

男子校に通う男の子が、女子校に通う女の子にラブレターを差し出すシーンから始まっていたと思います。

女の子は彼のことを何も知らないのに、顔が好みだった…という理由だけで付き合い始めるの。

でも、男の子はすっごくシャイで!!』



「プッ…!」


力説してる姿を思い出して笑いが吹き出た。

少し踊るような文字は説明が終わるまで続いていた。



『デートをしていても、ちっとも近づいて来ようとしないんです。それどころか、言葉すらもまともに交わそうとしない。

女の子はとても驚いて、男の子と付き合うってこんな感じなのかなぁ〜と勘違いするんだけど。

友達に相談すると、「それは変!」だと言われて不安になり始める。

確かに男の子は優しいところがあってカッコ良くて素敵なんだけど、女の子にとっては物足らない。

まともに顔も見ようとしない彼の視界に入ろうとしても、まるで避けられてるかの様に視線を逸らされる。

デートの回数が増えても彼の態度は一向に変わらなくて、女の子はとうとう寂しくなって泣き出すんです。


男の子は当然驚いて、どうして泣いてるのか聞きたいけど聞けない。

オロオロとしながらも何とかハンカチを手渡して離れていく。

どうなるのぉ〜と、こっちがハラハラさせられるんですが………』



上手い具合に便箋が切り替わった。

まるで小説のページを捲るかのように紙を後ろに回した。