優しく話す彼の声をずっと聞いていたい…と思った。

デパートの最上階にあるスイーツの店でオススメだとされているマカロンを食べ終わった頃、時間が迫ってきた…と気づいた。




「……早かったね」


残念そうに呟く彼の顔をまともに見れなかった。

このまま何も言われず、何も聞かれないでお別れしたい。

そうすればまた、私達は会う時間が作れるーーー。



願いながらホテルへと辿り着いた。

フロントに預けていたバッグを受け取り、ソファに座っていた彼の元へと駆け寄った。



「…今日はお時間を頂いてありがとうございました。小野寺さんにお会いできて大変幸せでした。また今度、会える日までどうかお元気でいて下さい」


ドキドキ…と速鳴る胸を抑えて言った。

彼の方もその想いに応えるように言葉を返してくれた。


「僕の方こそ、貴重なお休みを使って会いにきてくれてありがとう。今度は一緒に津軽先生に会いに行こう。また都合がついたら連絡をして下さい。待ってるから」




「……はい…」


きゅっ…とバッグを持つ手に力を込めた。

握手してから別れたい気持ちを、精一杯我慢して頭を下げた。


「じゃあこれで。電車の時間もありますので失礼致します。またお便り差し上げます。今度は私からでしたので…」