「来未さんは本当にレターセットを集めるのが趣味なんだね。そんなに集めて、一体何処へ手紙を書くんだい?」


俺の質問に小首を傾げ、小さく口元を緩めた。


「学生時代の友人とか、恩師とかにです。私はメールやLINEとかよりも気持ちのこもる手紙の方が好きなの。書いてるとウキウキしてくるし、次はあれを書こう、これも書きたい…と思い始めて止まらなくなる。文字には命が宿ると言うでしょう?その宿った想いが、相手に届けばいいな…と思ってしまうから、段々と枚数が増えていって読む方が大変!って言われたことも何度かあって……」


口籠ってしまった彼女を見やった。

言わなければ良かった…という横顔を見せ、彼女は「どうしようもないでしょう?」と笑った。


「小野寺さん宛てに書く手紙は、これでも随分自重してる方なんです。本当は津軽先生の作品についてとかセレクトブックに対する要望とか、山のように書きたいことが多くて…。でも、お仕事も忙しそうだし、私の長文の手紙に時間を割いて頂くのも申し訳なくて早々に切り上げるようにわざとしてるんです」


「そんな我慢しなくていいよ。君のくれる手紙は、ある意味現実逃避できるいい材料なんだ。読んでると心が落ち着く。だからこれからはもっと長い手紙を寄越されても平気。思いつくままに書いて。その代わり俺は今まで通りにしか書けないけどね…」