津軽先生にファンレターを書きたいと思ったのは、文具屋さんで優しい色合いのレターセットを見つけた時。


昔はどの雑誌の隅にもファンレターの宛先が記されてあった。
でも、このセレクトブックのどこを見ても宛先は載っていない。


思い悩んで発行元へ送ることを決めた。
先生の漫画に出会えたことの喜びと感動を、ただひたすら文字に込めることだけを心がけた。


『私が学生時代こよなく愛した津軽 芽衣子先生の作品を世に戻してくれてありがとう。このセレクトブックは、生涯を通じて私の宝物になると思います…』


単純にお礼のつもりだった。
学生時代の思い出を含めながら、私が津軽先生の大ファンだと分かればそれで良かった。


そんな手紙に返事をくれた人。


『小野寺 漠』さんとは、一体どんな方なのだろう。





返事を頂いた翌朝、セレクトブックの裏表紙を確認した。

発行者の欄に、手紙と同じ人の名前が印刷されている。

発行所となっている出版社は、有名な会社ではないみたいだった。

沢山の出版社が犇めく都会では、中小の企業があってもおかしくない。

むしろ、そんな小さな出版社との繋がりがある方が、返って津軽先生らしい気もしてくる。



ーー有名な少女雑誌に名を連ねていた頃から、他の人とは違った作風をしていた……。

派手ではないけれど、じわじわ…と心温まる作品が多かった。