津軽 芽衣子先生に連絡を取ったのは、手紙を送ってから3日ほど経った日。
「あらまぁ、小野寺さん⁉︎ 懐かしいわね〜」
電話口の向こうにいる女性の顔を思い出し、思わず口元に笑みが浮かんだ。
「ご無沙汰をしております。先生はその後いかがお過ごしですか?お風邪など召されておられませんか?」
「してないしてない!元気いっぱいよぉ〜。私も姉もね!」
聞いてもいない姉上のことまで教えられた。
姉妹2人だけで暮らしているのだから、当然と言えば当然だろうが。
「実は、折り入ってお願いがあってご連絡差し上げました。是非とも会ってお話を聞いて頂きたいのですが、何時ならご都合がよろしいでしょう?」
「そうねぇ〜。今月はちょっとお仕事の兼ね合いがあるから無理ね。時間も取れないし……きっと来月の半ばくらいなら良いと思うけど……小野寺さんからのお願いってなぁに?もしかして、また本を出したいとか言うんじゃないの⁉︎ 」
「ちょっとそれとは毛色の違う話なんです。また会えた時にでもお話ししたいと思いますので、お時間が取れそうな頃になりましたらご連絡を頂けますか?出版社の方に」
「分かったわ。また知らせるわ。…はいはい。姉にも宜しく伝えておくから。…またね、好青年!」
カチャ…と受話器を下ろした。
近頃は老いも若きもケータイだのスマートフォンだのいう時代。
重たい受話器を持って話すことなんて無くなりかけているのだけれど。
…我が家はまだまだスローライフなまま。実に呑気なもの。