「はぁ……」と深い溜め息をついてしまった。

長編でもない手紙のどこを読み返しても胸が熱くなる。


いつも以上に黒々と並んだ鉛筆の文字は、私が願った通りの内容だった。



「しかもこれ…メアドまで教えてくれた…」


願ってもない事態に戸惑う。

変更してしまえば、いつでも連絡が絶たれる方法なのに。



会えることが嬉しくて堪らなかった。

顔を見て、声を聞けるだけでいい…と言われた。


それ以上のことを願うかもしれないのは自分も一緒だと思う。


待ち合わせの場所が、ホテルのロビーだというのも胸ときめいている。


こんなにも楽しみにしてはいけない相手なのに、どうしても顔が緩んでしまう。

動悸がどんどん速くなり、気持ちの良さだけを優先させたくなってくる。
 

読み終えた今の感動を手紙に認めたい。

何度も何度もお礼を書いて、小野寺さんが来るのを待ち続けています…と教えたい。


自己陶酔に浸りたいのは私の方。

それでなくてももう、十分過ぎるほど浸りきっているけどーーー。



(あと少しだけ……。このまま幸せな気分でいさせて………)




10年ぶりくらいに訪れた春のような瞬間。

温室に咲く花のような気分でいられる今が、とてつも無く幸せだと実感した日だった。