4通目の手紙が届いたのは、3通目を送って直ぐだった。

嬉しさの余り、オフイス内で1人になれる場所を探して歩き回った。

資料室の片隅に置かれた椅子を見つけ、こっそり座り込んだ。


読み始めはウキウキとしていた。けれど、次第に眉間に皺が寄った。



彼女からの手紙は自分が想像していたものとは違った。

会いたい…と彼女が請い願ったのは、俺ではなく津軽芽衣子の方だった。


自分が書いた話のせいか…と一瞬だけ思った。

けれど、どうやらそうではないらしい。


『長年胸に抱いてきたもの。』


それを形にできるチャンスが俺を通して叶えられないか….。そういう意味に書かれてあった。


『お礼はそれなりにさせて頂きます』…という文章が、更に心を傷つける。


向こうには知られていない、また知る由もない俺の気持ちは、実ることもなく散った青春時代の恋に似ていた。


腹立ち紛れに、折角届いた手紙を握り潰しそうになった。

それを何とか堪えて、暫く見ないように生活した。


幸いなことに新しい本の出版を任されて飛び回っていた。

最上来未がどんなに返事を待ち望んでいるか、知っていても出す気にはなれなかった。



反省して手紙を開いたのは1ヶ月ぶり。

時間が経って読み返しても、やはりムカムカとした思いは変わらない。