縦書き封筒を横にした。

左右の指先に力を入れ、捻るように紙を裂こうとした。



親指の爪がくい込み、封筒の端に小さな亀裂が入った。

それだけで、直ぐに心が折れてしまった。





ーーー出来る訳がない。

この数ヶ月間、私の心を鷲掴みにして離さなかった手紙を裂ける訳がない。


自分からサヨナラしてしまう勇気もない。


彼の手紙も彼自身も、私にとっては宝物以外の何物でもなくなっているのだからーーーー。







カタン…と椅子を引いた。


買い集めたレターセットの束を引き出しから取り出し広げる。

これから書く手紙は、今までのものとは意味合いが違う。

それを肝に銘じながら、独り黙々とペンを走らせた………。