「今は何もないけど……」


そう言うと、彼は私の左手を取った。


そっと近付いてきた唇が、薬指の根元に落とされた。



「指輪の代わり。君が俺の所へ来れるようになるまでには、本物を用意しておく。それまで、この感触を忘れないでいて欲しい」


照れたような顔をして、指の先にもキスをした。

その唇を指先で触れ、自分の唇と重ね合わせた。



潮の香りが入り混じる中で交わした永遠の約束は、


その後、1年近く経ってから


ようやく現実のものとなったーーーーー。